Googleに対抗するとしたら
情報大航海プロジェクトはGoogle対抗国産エンジンを作るのが目的ではないとしても、あえて対抗したいとしたらどうするか?*1
「検索エンジンの破壊的な技術革新はもはやない」か?
ちょっと古い記事になるが、各国の「Google対抗意識(検索エンジン・ナショナリズム)」として韓国の例を取り上げた記事に次のような記述があった。
Googleの覇権を相対化するもの | 日経 xTECH(クロステック)
では日本の「情報大航海」のように,新規参入を試みる検索エンジン・プロジェクトにとって,韓国の事例は何を意味するだろうか?それを考える際に紹介したいのが,Web 2.0の提唱者,ティム・オライリー氏が最近語った検索エンジンの現状に対する次の意見だ。
「Googleが英語圏の市場を奪ったとき,彼らのサービスは競合他社よりも優れていた。しかし,今やどの検索エンジンも性能的には大差無い。逆に言うと,既にGoogleに馴れ親しんでいるユーザーが他の検索エンジンに切り替える理由は見当たらない。検索エンジンに関しては,破壊的な技術革新(disruptive innovation)の余地はもはや無いと思う。検索エンジンは技術革新の時代を終えて,整理統合の時代に移行しつつある」
当分の間は,破壊的な技術革新は起こせない。検索エンジンの改良で差が付かないのであれば,どうすればよいのか。
「破壊的な」技術革新はその定義上、単なる検索性能向上(そういうのを「持続的」技術革新という)の問題ではないはずであり、これは論旨がちょっとおかしい。*2「持続的技術革新の余地は少なくなり、もはや破壊的技術革新を待つまでになった」というほうが正しいのでは?
じゃあ実際のところ、現在の検索エンジンに対する破壊的な技術革新(disruptive innovation)とはどんなものだろうか?
「Googleの覇権を相対化するもの」
この点に関しては以下の記事の方が的確だと思う。ここでいう「相対化」="disruption"ととらえていいだろう。*3
Googleの覇権を相対化するもの | 日経 xTECH(クロステック)
この記事の問いかけを簡単にまとめると次のようなものである。
問:次の「?」をうめよ
Googleが他の追随を阻む要素として、
Googleの競争力の源泉は,そのインフラである数十万台とも言われるサーバー群と,集積されたデータだ。
と、インフラからサービスまでの垂直統合を挙げている点も同意。破壊的な技術革新はここを侵食しなければ。
そのためにはオープンソースだけでは足りなくて、オープン「リソース」が必要であろう。世界中の情報に関して誰でも任意の計算(ランキング、分析など)ができる環境である。*4
ということで、とりあえず:
- Googleのサービス覇権→オープンリソースにより相対化
としてみる。
Google対抗プロジェクト:オープンランキング
Googleの覇権のもとでのひとつの弊害は「ランキング」の独占(寡占)化だろう。検索エンジン側が何を収録するか、どう順序付けるか、ランキングの自由度は非常にあるのに対して、利用者側の検索エンジン(あるいはランキング)の選択の自由度は少ない(無いとは言わない)。この不均衡が「グーグル八分」という問題を引き起こしている。検索エンジンをもう一つ作ったくらいじゃ状況はあまり変わらない。
Googleに対抗したいのなら、ランキングをオープンにして、無数のランキングで世界をあふれされることだろう。ユーザはその中から自分にあったランキングを選んでいれば、この様な問題は軽減されるだろう。
新しいランキングを作ったら、オープンリソースの上で誰でも簡単に試せるようでなければならない。巨大データで遊ぶのは、もうGoogleの中の人の特権ではなくなる。
オープンリソースの上で、検索エンジンは次のように解体される。
- データの取得・蓄積 → オープンデータ
- ランキングや情報分析 → オープンランキング
このランキングや情報分析の部分をコンポーネントとして流通させ、市場の中でランキングを進化させてみたい。
このコンポーネントを仮に「フィルター」と呼んでみる(あるいは、関数でもクエリでも何でもいい)。フィルターといっても単に情報を取捨選択するだけでなく、複数の情報を統合したり、集計を取ったりというデータ操作一般を行う。ひとつのフィルターは世界の「ひとつの見方」をあらわしている。
一般的な検索だけでなく、たとえば口コミサイトなどもフィルターで実現される*5。フィルターを検索するフィルターも提供される。いくつものフィルターをマッシュアップして「オリジナルブレンド」のランキングを作ることもできる。
フィルター提供者は、それを記述するだけでよく、それに必要なリソースは利用者が必要とされるだけ割り当てられる。Googleをもう一つ作るのに、サーバの心配をしたり発電所の心配を(フィルター提供者は)しなくてよい。
さてこれをどうやって記述するか、どうやって実行するか、いろいろ技術的な課題があって、妄想していると楽しい。
…。ところで、破壊のあとにどんなビジネスが…?
それはわからない…。なんか出てくるであろう。
それじゃあ経産省的プロジェクトとは対極かな…。べつにいいけど…。
*1:ちなみに僕個人はプロジェクトとは関係なく、外野でつぶやいているだけです。インサイダーの知り合いは多いのですが…。
*2:オライリー氏の原文がわからないので本当にどう言ったかはわからない。
*3:ただし、この記事の後半の「サービスを超えるパラダイムは存在するか」という問いには「サービス」の定義がはっきりしないので答えられない。結局、その定義は、今で言うところの「サービス」を相対化するような概念が現れて初めてはっきりするのだろう…。これまでだって、「サービス」というパラダイムが提示されるまでは、何でもみんな「ソフトウェア」だったのだから…。つまりパラダイムというのは歴史を振り返ってのみ語ることができる。
*4:そんなこともあって、Gridコンピューティングの活動にもちょっと首を突っ込んだのだが…。この話は別の機会に…。
*5:そして口コミ「サイト」はやっとその役割を終える…。