2008-01-01から1年間の記事一覧

小説『日本語が亡びるとき』を読む

水村美苗の新作小説『日本語が亡びるとき』は、作者の二作目の小説『私小説 from left to right』を参照する形でのメタ私小説となっている。アメリカで生活しながらも英語に馴染めず、日本語にこだわり続ける主人公が、日本にもどって作家となり、その後どの…

『日本語が亡びるとき』を読む

梅田さんの釣りにかかって、水村美苗の新作エッセイ『日本語が亡びるとき』を日本から取り寄せて読んだ。すでに各所で指摘されているとおり、論考にはかなり飛躍や不整合があって、これが論文ならrejectだと思う。だが、エッセイとしては面白く、読み応えが…

『ウェブ時代5つの定理』:第4定理の証明をめぐって

証明されなければ定理とはいえない…。理系の人間として、最初はそんな無粋なことを思いながら『ウェブ時代 5つの定理』(isbn:4163700005)を読み始めた。だが第1章(第1定理)を読み進めていくうちに、「定理」の比喩するところがなんとなくわかってきた。…

御用学者と呼ばれて

自分の理解が正しければ(先生はもう「長老」なんですか?)、池田さんのエントリーでそう呼ばれているのは自分が尊敬する大先輩の先生のことのようなので、ちょっと複雑な気持ちである。スルーしようかと思っていたが、やはり何か言っておこうかと思う。 と…

情報系学会がなぜドメスティックになりがちか

先のエントリーには自分の予想を超える反応をいただいた。頭の中では「情報系」の若手を特に想定して書いていたのだが、文章ではそこがちょっとわかりにくかったことを反省している。日本語圏引きこもり問題は、学問の分野によってずいぶん状況が異なると思…

知の開国:大学の若手研究者ができる4つのこと

日本のIT業界は鎖国状態に近い。国内だけで回るシステムが産官共同で構築され、閉じた世界の中で生産性は一向に上がらず、日本発のソフトウェアやサービスが世界に広まるという事例が極端に少ない。残念ながら同じことが、大学を中心にした学問の世界でも起…

圏外からの眺め

衛星からの北朝鮮の夜景を見たことがあるだろうか。周りの国が光を放つ中、闇の中に人々が暮らしているかと思い、どきりとさせられる画像である。それと同じようなものがある。英語圏から見た日本だ。周りの国が光を発している中で、日本からの光はまったく…

大企業研究者のジレンマ

大企業研究者とは第一義的には大企業に勤める研究者だが、その性(さが)ゆえに大企業についての研究もしてしまう悩める研究者のことである。それはともかく、前回のエントリーで引用させていただいた中村孝一郎 (id:koichiro516)さんから反応をいただいた。…

大企業をゆく

更新をサボっている間に今日またひとつ歳をとってしまった。ちょっとここで、大企業に勤める研究者として自分の身を振り返ってみたい。『ウェブ時代をゆく』関連で大組織と小組織の対比が話題になったが、そもそも自分はなぜ大企業に勤めるのだろうか。『ウ…